がんによるいたみ
(侵害受容性疼痛)
    
    がんによるいたみ
(侵害受容性疼痛)の特徴
    
            がんによるいたみのうち、侵害受容性疼痛(炎症や刺激によるいたみ)は「体性痛」と「内臓痛」に分けられます
体性痛は皮膚や筋肉、骨などの組織で起こり、内臓痛は食道や胃、肝臓などの臓器で起こります。いたみの現れ方などにそれぞれ特徴があります
● がんによって生じる侵害受容性疼痛:体性痛
体性痛とは、体性組織(皮膚や骨、関節、筋肉など)への機械的刺激(切る、刺す、たたくなど)が原因で生じるいたみです。がんの場合、体性組織にがんが転移・浸潤(周囲の組織に染み込むように広がること)し破壊されたり炎症したりして、いたみが生じます。
いたむ場所は明確で、いたみは体を動かしたときに悪化します。
いたみ方は以下のように表現されます。
- うずくようないたみ
 - 拍動するような(ズキズキするような)いたみ など
 
          ● がんによって生じる侵害受容性疼痛:内臓痛
内臓痛は臓器で起こるいたみで、以下の刺激などがいたみをもたらします。
- がんが管腔臓器(胃や食道など空洞がある臓器)を狭窄もしくは閉塞し、臓器の内圧が上昇
 - がんによって肝臓や腎臓などの臓器が腫れ、被膜(臓器を包む膜)が伸展
 - がんが浸潤して臓器の被膜が炎症 など
 
いたむ場所ははっきりせず、「深く絞られるようないたみ」「押されるようないたみ」と表現されることがあります。いたみのほか、悪心・嘔吐、発汗などを伴う場合があります。
          ● がんによって生じるいたみのパターン
がんによる侵害受容性疼痛にはいたみのパターンがあり、「持続痛」と「突出痛」の2つに大きく分けられます。
- 持続痛…「1日のうち12時間以上持続するいたみ」として患者によって表現されるいたみ1)
 - 突出痛…定期的に投与されている鎮痛薬で持続痛が良好にコントロールされている場合に生じる、短時間で悪化し自然消失する一過性のいたみ1)
 
突出痛は持続時間が30~60分程度と一時的なもので、発生からピークまでの時間は5~10分程度と短いです2)。約8割が持続痛と同じ場所で起こります2)。
- 1)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版.金原出版 2020.p26-28
 - 2)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版.金原出版 2020.p28
 
監修
京都大学大学院医学研究科
 腫瘍内科学講座・腫瘍内科
 准教授/副科長
松原 淳一 先生