がんによる神経障害の症状
がんによる神経障害の症状と、いたみのパターン
            がんによる神経障害では、以下の症状などがみられます
- 1. ❶ 「刃物で刺すようないたみ」など、感覚神経がダメージを受けたことによるいたみ
 - 2. ❷ 感覚障害(感覚鈍麻・感覚過敏)
 - 3. ❸ 筋力の低下、発汗異常
 
また、いたみのパターンは「持続痛」と「突出痛」に大きく分けられます
● がんによる神経障害が起こる理由
がんによる神経障害が起こる理由として、以下のことが考えられます。
- 1. ❶ 筋肉や骨、臓器にできた腫瘍が末梢神経や神経叢(しんけいそう。脊髄から伸びる複数の脊髄神経が複雑に絡み合っている部分)に浸潤(周囲の組織に広がること)して神経が傷つくため
 - 2. ❷ 筋肉や骨、臓器にできた腫瘍が脊髄に浸潤して脊髄神経を傷つけたり、脊髄に転移して脊髄神経を圧迫したりするため
 - 3. ❸ 神経そのものに腫瘍ができて神経が障害されるため
 
❶及び❷の場合、がんがある程度進行していることになります。
          ● がんによる神経障害の症状
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1. ❶ 感覚神経がダメージを受けたことによるいたみ
感覚神経がダメージを受けて生じるいたみの症状や程度は患者さんによって個人差があり、以下のように表現されることがあります。また、いたむ場所はがんが浸潤した箇所によって異なり、体を走る神経に沿って現れます。
(いたみの表現例)
- 刃物で刺すようないたみ
 - 槍で突き抜かれるようないたみ
 - 焼けるようないたみ
 - 電気が走るような・ビリビリしたいたみ
 - しびれるようないたみ
 - 締め付けられるような・圧迫するようないたみ
 
                    いたみ
                    手足がしびれる
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2. ❷ 感覚障害(感覚鈍麻・感覚過敏)
神経障害は感覚障害を伴うことがあります。
- 感覚鈍麻…皮膚に刺激を与えても感じにくくなります。
 - 感覚過敏…少しでも触れたら痛みを感じてしまったり、通常はいたみを感じないレベルの弱い刺激を与えただけでいたみを感じてしまったりすることがあります。
 
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3. ❸ その他の症状
運動神経が障害されることで筋力の低下などが、自律神経の障害によって発汗異常などがみられることがあります。
                    筋力低下
                    発汗異常
また、腫瘍が浸潤・圧迫する場所によって様々な症状が現れます。
- 脊髄が腫瘍で圧迫された場合…膀胱・直腸障害 など
 - 腰の骨と骨盤の間にある神経叢にがんが浸潤した場合…下肢のむくみや水腎症(尿管が詰まって腎臓などに尿が溜まること) など
 
 
● がんによるいたみのパターン
がんのいたみのパターンは「持続痛」と「突出痛」の2つに大きく分けられます。
        持続痛は、「「1日のうち12時間以上持続するいたみ」として患者によって表現されるいたみ」と定義されています1)。
        突出痛は、「定期的に投与されている鎮痛薬で持続痛が良好にコントロールされている場合に生じる、短時間で悪化し自然消失する一過性のいたみ」と定義されています1)。いたみは一時的なもので持続時間は30~60分程度、発生からピークまでの時間は短く5~10分程度です2)。いたむ場所は約8割が持続痛と同じ場所です2)。
- 1)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版.金原出版 2020.p26-28
 - 2)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版.金原出版 2020.p28
 
監修
京都大学大学院医学研究科
 腫瘍内科学講座・腫瘍内科
 准教授/副科長
松原 淳一 先生