がんによるいたみの「治療」
がんによるいたみを「治療」する
            がんによるいたみの治療では、主に薬物療法が行われます
オピオイド鎮痛薬で十分ないたみの軽減ができないときなどに、他の治療薬が選択されます
それでも効果不十分な場合、他の治療法が選択されます
主な薬物療法
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● オピオイド鎮痛薬
いたみを伝達する脊髄や、いたいと感じる脳などの中枢神経に作用して、いたみを抑えます。
侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛の治療で用いられます。
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● 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
ステロイド(合成副腎皮質ホルモン)以外の抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を持つ薬剤の総称で、いたみを発生させる物質の産生を抑制することで、いたみを抑えます。
がんによって生じる侵害受容性疼痛に対し、処方されることがあります1)。いたみの程度が中等度または重度の場合、オピオイド鎮痛薬と組み合わせて用いられることがあります1)。
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● 解熱鎮痛剤
脳の体温調節やいたみを感じる中枢に作用することによって、いたみを抑えるとされています。
がんによって生じる侵害受容性疼痛に対し、処方されることがあります1)。いたみの程度が中等度または重度の場合、オピオイド鎮痛薬と組み合わせて用いられることがあります1)。
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● Ca2+チャネルα2δリガンド2)
いたみを脳に伝達する神経の中継点で、いたみを伝える物質(神経伝達物質)が過剰に放出されるのを抑えることで、いたみを軽減します。
オピオイドの鎮痛薬だけでは抑えられない神経障害性疼痛に用いられます。
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● セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤2)注)
いたみを抑える神経を活発にすることで、いたみを軽減する働きがあります。
オピオイドの鎮痛薬だけでは抑えられない神経障害性疼痛に用いられます。
注) 一部を除き、いたみに対し保険適用が認められていません。
など
 
がんによって生じるいたみの軽減のために、オピオイド鎮痛薬に代わって使われる薬剤を「鎮痛補助薬」といいます
鎮痛補助薬を適正かつ効果的に用いるためにも、どの薬を選択するか、いたみの情報を主治医等に詳しく伝えながら相談しましょう
薬物療法で効果不十分な場合に検討される主な治療法
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● 神経ブロック療法
局所麻酔薬などを神経の周辺に注入し、いたみの情報が脳に伝えられるのをブロックする治療法です。
いたむ場所に直接注射するため、ピンポイントでいたみの軽減が期待できます。 - 
            
● 放射線治療3)
がんによる侵害受容性疼痛のうち、がんの骨転移による骨痛の治療に用いられます。骨転移したがんがある部位めがけて放射線を照射し、がんを縮小させいたみを軽減させます。
また、神経障害性疼痛の治療にも用いられます。神経を圧迫したり神経に浸潤したりしているがんめがけて強い放射線を照射し、がん細胞の遺伝子にダメージを与えがん細胞を死滅させ、いたみを軽減させます。
 
- 1)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版.金原出版 2020.p82-86
 - 2)日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版.金原出版 2020.p87-92
 - 3)公益社団法人 日本放射線腫瘍学会編:放射線治療計画ガイドライン2020年版.金原出版 2020.p387-401
 
監修
京都大学大学院医学研究科
 腫瘍内科学講座・腫瘍内科
 准教授/副科長
松原 淳一 先生